オッとドッコイ
土地神話は崩壊しない

  先年の地価高騰は、戦後幾度かの同様な経験のうちでも、最大級のものでした。東京郊外の平均的分譲地で、値上がり前の坪単価60〜70万円位だったのが、昭和62年夏のピークで200万円を超え、そして現在100万円前後といわれています。概ね3倍に上がって1/2に下がったという所でしょうか。事業用地、商業用地のように、同じ土地でも投機対象となり易かったものはより大きく急騰して急落したのが、今回の地価変動の特徴だったと思います。
さて、土地投機という仮需要によって上がり過ぎた部分は、事実この4〜5年の調整局面で下がりましたが、では、政府の言うように値上がり前のレベルにまで地価は下がるのでしょうか。所謂「土地神話」は、崩壊するのでしょうか。
いま、崩壊しないという前提に立ってみましょう。というのは、土地神話とは単に「土地の値段は下がらない」ということを意味するだけではなく、「土地の資産としての重要性は変わらない」ということだからです。
「資産」とは、現在の購買力を将来へ持ち越す為の媒体であると定義するならば、土地に代わる「資産」は現在の日本では他に無いのです。
福祉政策の貧弱な今の日本で、老後も一応不自由なく暮らしていく為には、現在の所得を今すべて使ってしまわずに、将来の為に「資産」として残しておく必要があります。
では、それをどのような「資産」にしておけば良いのか。資産の有利性は、(1)安全性、(2)値上がり性向、(3)運用収益性、(4)換金性の4つのポイントによって評価されるといいますが、簡単に変形、損耗せず、盗まれにくく、又、インフレによっても目減りせず、現在においても利用価値があり、場合によっては収益も期待できる「資産」とは?と考えると、どうしても土地ということになってきます。
土地さえ持っていれば、いざという時になんとかなる、という安心感を皆持っています。日本人の農耕民族としての根強い伝統なのか、未だに「一所懸命」なのです。
現に今政府が地価を引き下げるべく目標としているキャッチフレーズで「真面目なサラリーマンが一生働いて家一軒持てるような世の中」にすることだと言っています。この言い方こそ、平均的日本人を「持ち家」へかりたてて、ますます「一所懸命」にする価値観なのです。これでは、土地神話は強化こそされ、崩壊することなどありえません。
政府が本当に土地の「値段」を下げるつもりなら、まず土地の供給を増すことです。その為の土地政策、金融政策、税制政策を積極的に進めて、さらに国民の1人1人をこの「一所懸命」という土地の呪縛から解放させることが必要なのです。
今のように「真面目なサラリーマンが一生働いて、家一軒持つ」価値観では、まるで家の一軒も持たないサラリーマンは、すべて不真面目だと言わんばかりであり、借家住いのサラリーマンなどは、女房子供から軽蔑されかねません。
より選択肢の多い方が、より豊かな、より幸せな世の中であるとするならば、猫も杓子もマイホームではなく、借家住いでも充実した個人生活を営むこと、あるいは、所有不動産を現金化して、さらに豊かな生活をエンジョイすることなど、様々なライフスタイルがあってよいと思います。
こうした価値観の多様化により、土地への執着が減り、そして土地の供給も増えるならば、その結果として土地価格も需給バランスによって下がると考えられるのです。将来土地が本当に下がるのか否か、言い方を変えるならば、政府が本当に土地の値段を下げようとするのか否かは、目先の政策ではなく、第1に福祉政策であり、第2にライフスタイルの価値観の多様化に対していかに配慮していくかにあるといえます。「土地神話」あるいは「土地神話の崩壊」という言葉に惑わされることなく、土地についても各々の立脚点を確かなものにしていくことが大切だと思います。

(株)ハート財産パートナーズ 林 弘明


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