トーテムポール
地主の為の土地戦略

  トーテムポールをご存知ですか。西部劇でよく見る、顔をいくつも積み上げた彫刻柱です。今回はこのトーテムポールになぞらえて、地主の為の土地戦略を書いてみたいと思います。
地主といっても、大地主から小地主までその規模は様々ですが、由緒ある地主さんの場合当代で十数代目という方もいらっしゃいます。家系が100年を経ている場合もあります。由緒ある家系の地主さんにとって現代は、「越すに越せない大井川」なのです。その理由は相続税です。先代や先々代が土地を相続した時代に比べて、今日では比較にならない程土地の評価も高額となりまた相続税率も効率となりました。
平成15年の相続税法改正によっていくらか軽減されたとはいえ、大地主にとって現行相続税がどのくらい過酷なものか、示してみましょう。



この表からもお分かりのように、配偶者と子一人の場合の相続で10億円の財産の約3.6割が相続税となります。先に配偶者が亡くなられて子1人が相続人となる場合などは10億円で42%、20億円で46%、30億円で47%が相続税となります。
これら相続財産の大半が金融資産なら、相続税を払うにもあまり問題はありませんが、日本の資産家の多くの場合、そのほとんどが土地です。いざ相続が発生してその土地が思うように換金も物納も出来ないとなると、大地主は資産家転じて破産家になりかねないのが現状なのです。
そこで、大地主にとってはいまや相続対策が必須の課題となっております。その相続対策として第1に節税対策、第2に分割対策、そして第3に納税対策という3つの柱があることをまずご承知下さい。
第1の節税対策については、この数年の相続税法やその通達の改正によって超法規的な手法は概ね封じられました。今はじっくり時間をかけた正攻法が残されるのみとなったのです。
第2の分割対策については、遺言という方法で争いを未然に防ぐことが出来ます。
第3の納税対策、これが今や最も重要な課題となりました。どうしても支払わねばならない相続税をどのように支払うか、また同じ支払うにしても、残余財産の価値を減ずることなくどう支払うか、そこに問題は絞られます。
さて、こうした相続対策も、その財産の大半が土地である大地主には、相続以前の基本対策としての不動産の整理・整頓が必須となります。
不動産はその一つ一つが個別的な事情を持っています。ご当主本人しか知らない、あるいは分からない事情などは、本人が生前に整理しておかなければなりません。
こうした整理・整頓の課程を通じて、不良不動産の優良化を行うことも出来ます。
優良な不動産は「保有」し、不良な不動産は「非保有」として相続税の納税に充てるというのが地主の相続に対する戦略となります。
地主の所有する個々の不動産について、優良・不良の順位付けを行うことが、ちょうどトーテムポールの顔の上下の順番に似ていませんか。優良なものほど上へあがり、不良なものは下におりることになります。相続が発生した際は、一番下から順番に相続税額に達するまで上へあがりながら納税に宛てていくのです。
そこで大切なのがトーテムポールの作り方、つまり個々の不動産の優良・不良の順位を決める基準です。それは次の三つに求めたら良いと思います。
不動産の、1.利用上の必要度・満足度 2.収益性 3.換金性 です。
一般論として具体的な不動産をトーテムポールとして並べるならば、次のようになると思います。



しかし、このトーテムポールは、一度並べた順位をそのままにしておけば良いというわけではありません。「不動産の整理・整頓」「不良不動産の優良化」を行いながら、常にその順位を変更します。優良化された不動産はその順位を上げていきます。こうして地主の不動産はより高度に優良化され、相続対策のうちの納税対策がより進んでいくことになるのです。最下位の不良資産である「貸宅地」についても、さらに細かくトーテムポール順位がつきます。
「貸宅地」の優良・不良基準を次に示します。
1. 更地可能性 借地・底地交換可能性
借地権買戻し可能性
2. 換金可能性 底地売却可能性
底地・借地件共同売却可能性
3. 物納可能性 物納適格化可能性
以上の基準に従い、借地人との事前の交渉をもちながら相続税納税にとって、どの貸宅地が最も適しているかを判断しながら、トーテムポール順位を付け直すのです。
貸宅地では、地代供託中のものや法的係争中のものもあり、また、どうしても借地人との人間的相性が悪いものもあります。こうした物件ほど相続という世代交代の際に非保有として手放したいものです。「不動産の整理・整頓」を通じて個別にもつれた事情の糸をほぐし、換金するなり物納するなりして、争いや煩いを次世代へ送らないのが賢明なことと思います。
地主の為のトーテムポールとは一口に言って財産の優先順位付けです。広義には現金預金や有価証券も含めた全財産の順位付けであり、狭義には不動産種類の順位付けとなります。さらに細かくいえば不動産の各種類毎の個々の順位付けとなります。
相続対策の基本対策としての「不動産の整理・整頓」「不良不動産の優良化」を行いながら、このトーテムポールの順位付けをすることは、現代の大地主さんに必須のそして緊急の作業といえるでしょう。

(株)ハート財産パートナーズ 林 弘明


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