地主さん、こんなにお得
貸 地 の 生 前 処 分

  相続が発生した時、貸地を処分換金して相続税を支払おうとすると、その貸地に課税された相続税以下でしか換金できないこともあります。ともすると、実はこのような貸地を持っていること自体、「負」の資産を抱えているようなものです。

  さて、相続対策には資産の整理・整頓という基本対策とそれに続く3つの対策、節税対策・分割対策・納税対策があります。今回のテーマである貸地の生前処分は、この基本対策である「資産の整理・整頓」のなかでも優先項目の第一です。「貸地の生前処分」のメリットは次の5つです。

    1.相続税の節税
    2.相続財産の分割の容易性
    3.相続税納税資金の確保
    4.処分後の手元資金の運用による所得向上の効率化
    5.貸地減少により、貸地経営による人情面の煩いの減少


  第1のメリット、相続税の節税について、相続税評価額1億円の貸地を、相続発生の前と後で処分換金した場合を想定して、相続税、譲渡所得税を差し引いた手取金で比較してみましょう。

  <条件>
  (イ) 換金率70% この貸地を処分換金した場合の相続税評価額に対する割合
  (ロ) 生前処分手取金65%   貸地の相続発生前処分の場合の譲渡所得税引後、手取金の相続税評価額に対する割合
  (ハ) 相続税50%


  <手取金計算>
  相続発生前処分
    1億円×(イ)70%×(ロ)65%×(1−(ハ)50%)=2,275万円
  相続発生後処分
    1億円×(イ)70%−1億円×(ハ)50%=2,000万円


  上記の計算の前提条件のうち、(イ)の貸地処分の換金率70%、逆にいえば値引率30%で処分することが、高いか安いかという点については、各地主さんにより異論もあるでしょう。なかには貸地といえども相続税評価額の満額かそれ以上で換金できる場合もあれば、半値以下でしか処分できないものもあるでしょう。私の実務経験上では、平均すると今の相続税評価額の70%位となります。
  また(ハ)相続税率50%についても、前提とするには高すぎないかと思われる地主さんもいらっしゃるでしょうが、相続税法では、課税遺産額3億円を超える部分については、50%税率の適用となります。相続税節税対策を考える場合、相続発生を仮定した際の相続税額を課税遺産額で割った平均税率で考えるのでなく、相続税率が高累進税率なので、累進税率区分ごとに上乗せ分からその税率を考えていかなければなりません。前提条件次第では、節税可能な額に変化はありますが、相続発生前処分と発生後処分のどちらが有利かといえば、やはり発生前処分ということになるでしょう。

  第2のメリットは相続財産の分割の容易性です。相続人が一人なら何ら問題はありませんが、複数の場合、相続財産のうち誰がどの資産を貰うかは大きな問題となります。兄弟というものは、子供の頃おやつを分けるのにもケンカをしたくらいです。まして大人となり各々が家族を養い一家をなしているのですから、より有利な資産をより多く貰いたいのは人情の常、「泣く泣くも良いほうをとる形見分け」という諺の如しです。
  そこで、分けるべき資産が、優・良・可・不可といった具合に区別されてしまうものであるなら、誰でも同じ評価額と言っても現金のような「優」を取り、貸地のような「不可」は貰いたくありません。貸地を生前に処分しておくことは、この遺産分割の際の「不可」の資産をなくしておくことであり、分割を容易に運ぶ秘訣となります。

第3のメリットは相続税納税資金の確保にあります。相続税の節税対策でも今ではその殆どの作戦が封じられ(?)ある程度の資産家は、いざ相続が発生した場合、相当な額の相続税を納めなければなりません。相続税納付は原則として金銭納付です。万一それが困難な場合、延納・物納という例外的な方法もありますが、延納は結局金銭納付で延べ払いできる支払い原資が必要です。そして物納は、不動産の場合、適格条件が厳しく問われます。まして貸地の場合、借地人という権利者がいる為様々な制約がつき、事前の周到な準備がなければ簡単に物納が出来ません。そこで、これらの貸地を生前に処分換金しておけば、金納が可能ですからいわゆる相続税納税対策になる訳です。

  第4のメリットは、貸地の処分換金後の資産運用による所得向上の効率化です。一般的に地代収入は、資産運用効率からみて非常に低いものです。貸地を処分換金してその資金を効率的に運用することによって、大抵の場合所得向上の効率化を計ることが出来ます。そして第5のメリットは、貸地の処分換金によって貸地経営の人情面での煩いが減っていくことです。貸地というものは、法律と経済の問題であると同時に人情の絡む問題でもあります。何十年来の地主と借地人との関係のうちには、様々なことが当然に起こります。良いことも嫌なこともあります。むしろ嫌なことのほうが多いかもしれません。こうした「煩い」を、貸地を処分してしまうことで無くすことが出来ます。この第5のメリットこそ、資産家の地主さんにとって最大最高のものかもしれません。

  貸地を生前に処分換金して、節税・分割・納税の三つの相続対策を計り、所得を効率化して、しかも精神面の煩いも減らして、真の豊かな老後を過ごし、少しでも長生きすることが最高の相続対策となることでしょう。

(株)ハート財産パートナーズ 林 弘明


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